The light stuff  あかるいひとたち

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「特殊設定の話」
学パロ ちょっと長めの話 

学校へGOGO!~お嬢様の家庭の事情 その5~

出会って十数年が経過しているので、いい加減、彼女の突拍子もない言動には、慣れっこになっているはずのクリフトだったが、アリーナの言葉は、そんなクリフトの思考能力をいともあっさり奪いさった。

「わたしね、あなたが好きなの。大好きなのよ」
「は?」
「だから3年、ううんお願い2年待って!その間に炊事も洗濯もお裁縫も園芸も(人並み以上は無理でも)それなりに出来るようになってみせるわ!ねぇ、そうしたら安心してわたしのことお嫁さんにできるんじゃないかなぁ?」
そこまでを一気に言うと、頬を赤らめたまま上目使いでじーっとクリフトを見つめるアリーナ。
「え?え??」
このいきなりの、まさかの発言にクリフトの思考回路は未だ何処かへ行ったまま戻ってこないようで、彼は鳩が豆鉄砲をくらったような顔で、ただ瞬きをするばかり。

「酷いっ!何でなんにも答えてくれないの!!わたしがこれを伝えるのに、どれだけ悩んだと思うの!それに、それにすっごく恥ずかしかったのにー!!」
反応が芳しくないことにショックを受けて、今度はその肩を掴むとがっくんがっくん揺さぶりはじめるアリーナ。
「わ、うわぁっ?!」
「まさか?!ナイスバディにならないと対象外とか?はぅぅ、ま、まだ16だもん!これからおっきくなるわよ!いいえ!おっきくしてみせようじゃないのっ!!」
何が小さいかについては(想像はつくが)アリーナの名誉の為にコメントは差し控えておく。しかし何故にこんな発想が出てくるんだか。

「どうなのよ!もうはっきり言ってよー!!言っとくけど『いいえ』なんて言わせないんだからねっ」
もう気恥ずかしさやら、返事を聞く怖さやら、様々な感情にとらわれてパニック寸前となったアリーナとは逆に、揺さぶられたことで、己を取り戻したクリフトは、ちょっとだけ逡巡するも自身の命の危険も察知して強硬手段にでた。
「落ち着いて下さい、アリーナ」
次の瞬間アリーナは、クリフトに抱きしめられていた。それは思わず息が止まるかと思うくらい強い力だった。
「え?!」
今度はアリーナの思考が真っ白になる。彼から呼び捨てにされるのは、実に十年ぶりの出来事であった。そして身長差のせいでアリーナは、すっぽりと彼の胸に顔を埋めた形になっていた。不意に感じた温かい鼓動と彼の香りに、胸を高鳴らせとたんに大人しくなるアリーナ。普段は押しが強いアリーナだが、実はとても乙女なので逆に受け身に回ると、もうどうして良いかわからなくなる。耳まで真っ赤になって、今はただクリフトの抱擁を受け止めていた。

「・・・・お嬢さん、少しは落ち着きましたか?」
「う、うん・・・・」
しばらくたった後で、クリフトはそっと腕を解いた。すこし勿体無いような気もしたが、そんなことよりも確かめなければならないことがあった。

「今のは・・・・・あの、ぷ、プロポーズと受け取っていいんでしょうか?」
「え?!・・・・・・えと、そこまでは考えていなかったんだけど・・・・?」
「もう一度、保健室での話を僕に教えてくださいませんか?」

そう言われ、アリーナは自分の気持ちも知らないで、涼しい顔をして!とか、何でお嫁さんにしてくれると言ってくれないのだろうとか、クリフトを恨めしく思っていたことから話し始めた。素直にも『泣くまで殴る』のくだりも正直に喋った。その中で、いくら恋人で幼馴染で一番近くにいるとしても、自分の全部をそのまま受け入れてもらおうなど無理な話だということをミネアに諭され、アリーナにも事情があるようにクリフトにも色々な事情があるのだということを理解したこと、そしてソアラ達に言われて自分の家庭環境が、どうやらすこし特殊だということにもなんとなく気がついた、とアリーナは語った。

「だけどそれでも、わたしはやっぱりクリフトのお嫁さんになりたいの」
とアリーナは続けた。今すぐじゃなくてもいい、けれど絶対誰にも、この権利を譲る気はなかった。だが考えてみれば、自分は花嫁修業など、何一つまともに出来てはいない。ならばちゃんと習得してからでも、お嫁に行くのは遅くはないはずだ。そう思ったら今まで何を悩んでいたのだろか、と馬鹿らしくなるくらい、すっと道が開けた気がした。ならばこれはもう直ぐに、この気持ちと決意を伝えなければという訳で、アリーナは生徒会室に乗り込もうとしたのである。

「だから2年待って、なんですね?」
アリーナの話を聞き終えて、全てがわかったクリフトの顔は、夕日の如く真っ赤になっていた。それは最悪の展開を想像していたクリフトにとっては、信じられないような幸せな出来事であるのに、その胸の中には一つの棘のようなわだかまりが生じていた。

「うん。で、どうなのかしら?待っててくれる?」
負けじとこちらも耳まで赤くしたアリーナが、またじっとクリフトを見つめる。その真摯な瞳に、クリフトは痛みを覚えた。

「アリーナお嬢さん。僕なんかでいいんですか?僕はあなたを守るどころか、悩ませてばかりの情けない男です。あなたのお父上に睨まれるのが恐かっただけの臆病者で、どうしようもない奴なんですよ」
(ほら、言ってるそばから・・・。こうやって僕は自分を庇っている)
アリーナは自分を責めるどころか、もっと先のことまで考えてくれていたというのに、彼女の父の機嫌を損ねたら、居候である自分は家を追い出されるのではないか、そうして彼女と二度と会えなくなるのではないか、という不安がずっと消えなかった。ちょっと考えれば、そんなことはあるはずもないとわかっていたのに。

こんな自分のことしか頭にないような奴が、彼女の側にいる資格などないと思っているくせに、その判断もまたこうして相手に委ねている本当に狡い自分の姿には、心の底から嫌気を覚える。ちくり、とまた棘が痛んだ。

「ねえクリフト、そんなに自分を嫌わなくっていいじゃない。いっつもいっつも言ってるけど、あなた考え過ぎなのよ。第一その考えって、わたしに失礼だわ!あなた好きな人の悪口を聞くの好きなの?」
「まさか!そんなことは決してありません」
「でしょう?だったらもうそれ以上言わないで!ねぇ、欠点なんて誰にだって沢山あるわ。だけどそれも含めて『好き』になれるってとっても素敵じゃない?」
「だけど僕はあなたが思うほど綺麗な人間で、って痛、痛いっ、うわぁぁ!!」
クリフトが悲鳴をあげる。アリーナがクリフトの背中を思い切り抓っていた。しかも両手で。

「自分を悪く言うのは禁止!もぉぉ、頭良いくせに何でわかんないのかしら!」
「だからってどうして抓る必要があるんですかっ」
「あら、手のほうがよかった?」
「いえ、何でもありません」
にこやかに両手をグーの形にしたアリーナに、それ以上何が言えただろうか。

「好きよ。優柔不断なとこも、人に気を使いすぎるとこも、実は結構意地悪で容赦がないとこも、全部大好き!そりゃぁ、たまにはそんなとこに怒ったりもするけれど、大丈夫よ!!嫌いになったりなんてしないから」
そして止めの一言。クリフトはもう完全に白旗を上げるしかない。もう胸に痛みは起きなかった。それはアリーナが完全に吹き飛ばしてしまった。じわりと心に染みるように幸せが沸き上がってくる。それにどう転んだって自分はアリーナを愛していて、彼女を諦めることなど出来はしないではないか。

ならば答えは決まっている。

「僕は一生あなたに勝てないって、再認識させられました」
「あらそうなの。それよりさっきの返事を早く頂けないかしら?」
「あの、提案なんですが、待つのではなく一緒に頑張らせてもらえませんか?」
「?」
「僕はこの通り、自分に自信というものが持てません。けれど、アリーナお嬢さんのその前向きな姿勢を見習って、これからはあなたにふさわしいと誇れる人間になりたいと思うんです。ただ、僕の場合2年じゃ足りない気がしますので、その時は少しお待たせしてしまう気もするんですけれど」
「勿論そういうことなら喜んで!」
綺麗な白い歯を見せてアリーナは笑った。

「では、お父上にもう一度お願いをしに行かないといけませんね」
また顔を赤らめて、クリフトが言った。
「何を?」
「『結婚を前提としたお付き合い』です」
「嬉しいっ!!!!」
がばっとクリフトの首に飛びつくアリーナ。しっかりとそれを受け止めて、クリフトは両腕を回してアリーナを包み込んだ。それはとても優しくて、甘い抱擁だった。


「よかったぁー」
2年5組教室の隅で、こっそりと二人を見守っていたシャルは、この結果に安堵のため息をついた。
「ったく、やってらんねーや!!」
そんなシャルの横では、ソアラが思い切り不機嫌そうに悪態をついていた。万が一の事態に備え、兄妹はアリーナにも内緒で、ずっとここで待機していたのである。

「お兄ちゃん、どうしたのよ?良かったじゃない!これでもう二人の沈んだ顔見ないで済むんだよ?お兄ちゃんだって、先輩のこと心配してたんじゃないの?」
「してねぇよ!!俺はお前が泣きつくからだな、仕方なしに協力してやっただけだ。あー畜生、やっぱやるんじゃなかった!!」
頭を掻きむしるソアラに、シャルは納得がいかないといった顔を向ける。
「何でなの?何がそんなに気に入らないのよー」
「いいかシャル、この手のことにもう金輪際一切首を突っ込むな。さもないとな、こーいうとんでもねぇことになる」
ソアラがくい、と顎を前にしゃくった。
「何を言って・・・・・、ほ、ほぇぇぇぇぇぇぇ?!」
火を吹いたように顔を真っ赤にして、思わず叫びそうになったシャルは慌てて自分の口を抑えた。その視線の先には、二人だけの世界に浸るクリフトとアリーナの姿があった。

「あんの野郎ぉ、遺書返しのつもりかよ!ぜってーわざと見せつけてんな、ありゃ」
「それを言うなら意趣返しでしょ!ってえええええ!嘘っ。ま、まさか先輩が?!」
「そのまさかだ!クリフトが俺らの気配に感づかないわけがねーだろぃ!!」
親友のラブシーンなんて、こっ恥ずかしくてとても見れたものじゃない。急ぎ回れ右をするソアラとシャルだが、背後がやっぱりちょっと気になる微妙なお年ごろな兄妹でもあった。はっきり言ってこれはかなり拷問に近い。

「どうしようお兄ちゃん。今更ひょっこり出て行くわけにもいかないし、こっそり出ようにも距離があり過ぎて、なんかアリーナに見つかりそうだよぉ」
気配に聡いのはクリフト先輩で、動体視力に優れるのがアリーナだったなと思うシャル。ちょっと涙目である。
「知らん!もーどうにでもなれ!」
「そんなぁー」
シャルはこの時初めて、この件に首を突っ込んだことを後悔した。そして兄妹が教室から出れたのは、完全に日が落ちてからであったことは言うまでもない。

そしてさらに、ここまで大騒ぎした件の食事会は結局お見合いでも何でもなく、ただの普通の食事会であった。当日にアリーナの父親が一緒に連れてきたのは、何と休暇をとって故郷に戻ってきていたというクリフトの両親。アリーナ達を驚かせようという、父の茶目っ気が完全に裏目に出たというオチであった。

クリフトはそれでもしっかりアリーナの父親と自分の両親の前で、結婚を前提のお付き合を改めてお願いしその権利を見事得たという。そのくだりのお惚気を耳にタコが出来るほどアリーナから聞かされたシャルは、もう絶対に何があっても金輪際、首を突っ込むまいと固く固く誓ったのであった。

おしまい
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