The light stuff  あかるいひとたち

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←「パデキアに関する一つの仮説」あとがき    →「ソアラの逆襲?!」あとがき
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冒険中の話

ソアラの逆襲 ?!

「待ちなさーい!」
「止まりなさい。この莫迦勇者っ」
「待てと言われて待つ奴ぁいねぇし、莫迦言うほうが莫迦だろがっ!!」

小休止のさなか、些細な言い争いから翠緑の少年を追いかける、紅玉の瞳の少女とそれに加勢する蒼髪の青年の姿があった。他の仲間達は、呆れつつも我関せずといった立ち位置を貫いている。いい加減にしろとは思っても、このトラブルメーカーである勇者が禄なことをおこさないのは、既に実証済み。だから大人達はソアラを相手に、いらぬ被害を被るのは真っ平御免とばかりに無視を決め込んでいるのだった。それにこれは彼らにとって大事なコミュニケーションの一環でもある。

「待ちなさいったら!!」
「うぉ?!」
パーティの中でも一番の素早さを誇るアリーナが、フェイントを仕掛けてはちょこまかと逃げまくるソアラの襟足をとうとう捉えた。そのまま力任せに引き倒そうとするが、運の悪いことに踏み出した足元に軽いぬかるみがあったため、バランスを崩してしまった。せっかく捕まえた襟からも手が離れてしまう。

「きゃぁっ」
「姫様?!」
転びそうになったアリーナに、間一髪でクリフトが追いつく。腕を伸ばし、傾くアリーナの体を何とか捉えた。そうしてアリーナの小柄な体は、すっぽりと長身のクリフトの腕の中におさまり、まるでそれは恋人を後ろから抱きしめているかのような格好となった。これに思わずマーニャは口笛を吹き、ブライはぴくりと片眉を動かすが無表情で通す。

「よかった。お怪我はありませんか?」
「う、うん。ありがとう」
少し恥じらいながら自分を見上げるアリーナに安堵しながらクリフトは、はた、と今の行動を思い出した。
「あ!こ、これは大変失礼いたしました」
そうしてすぐに飛び退くように離れるクリフトを、ちょっぴり恨めしくアリーナは思ってしまう。背ばかり伸びたなどとブライに揶揄されるクリフトだが、思いの外しっかりと自分を捉えた腕や、体の逞しさに恋する乙女の胸はときめき、もう少しこのままでと思わず願ったというのに。だが咄嗟とはいえ、華奢で柔らかいアリーナの体に触れてしまったクリフトも珍しく動揺を隠せず、その顔がほんのりと赤く染まっていたことには、とことん鈍いアリーナは気が付かないのであった。

「んだよ、もう終わりかよ?つまんねーなぁ」
目の前では、ソアラがにやにやと笑っていた。とうに逃げたかと思いきや、彼は手を頭の後ろに組んでこの場に留まっている。
「このヘタレ。そのまんまぎゅーっと抱きしめるくらいはやらんかーい」
さらに囃し立てるソアラを、クリフトはきっ、と睨んだ。

「ソアラっ!いい加減にしてもらいましょうか!」
そう言ったクリフトの左手に、紫炎が宿った。聖印を切ると同時に、唇から短く発せられる呪文錬成の文言。神官であるクリフト唯一の攻撃呪文にして、切り札でもある死の呪文、ザキである。しかも、ここぞと言う時のクリフトは絶対に呪文を外さない。だからこの呪文を、ソアラは酷く恐れていたはずだった。

だがしかし、今日のソアラはそれにまったく動じることなく、悠長に構えている。
「へへ。そーくると思ったぜぃ」
予想通りだなぁ、と呑気に呟くと両手を前に突き出して、こちらも早口にある呪文を詠唱しだす。

「マホステ!」「ザキ」

ソアラの両手から放たれた紫の霧がその周辺を包み込む早さが勝り、クリフトの放った紫炎をかき消した。ソアラが詠唱したこのマホステは、呪文攻撃を一定時間無効化するというもので、勇者である彼にのみ操れる特殊な補助魔法である。魔法が不得手な彼はつい先日、これを恐怖の実践の末にようやく会得したのだった。

「っ!考えましたね」
マホステによる防御はまったくの予想外。これにはクリフトも驚きを隠せなかった。アリーナもまさかの事態を目の当たりにして、目を丸くしている。
「ふっふっふっ。いつまでもやられっぱだとおもうなよぉー」
まるで鬼の首でもとったかのように、胸を張って仰け反るソアラは、さらにこう宣言した。
「ここからは俺の独壇場だい!今まで虐げられた分のお返しは、きーっちりとやってやんぜっ!!」
「はぁ?!」
何を訳のわからない事を、とクリフトとアリーナは顔を見合わせた。ソアラからすれば、それは二人から受け続ける見当違いも甚だしい嫉妬の数々を指しているのだが、互いに両思いなのに片思いだと思い込み、すれ違いコントを繰り返すこの二人には全く通じていないのであった。

「いや、そこには慌てるとか焦るとか・・・っつ!!いってぇぇー!!!」
この反応にツッコミをいれようとしたソアラであったが、次の瞬間に頭をおさえてうずくまった。マーニャの鉄の扇による華麗な一閃が後頭部に命中したからだ。
「じゃれるのもそこまでよ。そろそろ出発しないと、また今日も野営することになりかねないんだから」
「酷いっ!!衝撃で頭とかおかしくなったらどーすんだよ?!」
「アンタはドラゴンで踏んだってケロッとしてるんだから大丈夫でしょうが。いいから早く準備を手伝いな!」
「ま、まぁ、それもそーなんだけどもよ」
事実、ドラゴラムでドラゴンとなったマーニャに(手違いから)踏みつけられても、何ともないのがソアラという少年なのである。よって抗議は即座に却下され、本日の哨戒当番である彼はマーニャに強制的に移動させられる。

「お前らっ、次を見とけよぉぉぉ!」
と三下のような台詞を残し、ずるずるとマーニャに引きずられていくソアラ。アリーナは呆れ顔となり、クリフトは天を仰ぐと髪をかき上げて深い、深い溜息をついた。

「どうしたの?」
「申し訳ありません姫様。何やら嫌な予感がいたしまして」
「ソアラが覚えたての魔法をやたらと使いたがるのはいつもの事じゃない?どうせ今回も同じで、きっとすぐに飽きるわよ」
「だといいのですけれどね・・・」

そう呟いたクリフトの予感は、見事に的中することとなる。

この出来事からさらに数日後、宿の一室には、ソアラを除いた一同の姿。その顔は皆、一様に硬いものだった。死の魔法の恐怖から開放されたソアラは、あれからどんどん調子に乗り、皆にいたずらを仕掛けたり、当番をサボったりと、まるで小さな子供のような奔放な行動ばかり目立つようになっていた。ソアラが、アリーナとクリフトによる理不尽な嫉妬の被害者であったこともあり、当初は大目に見ていた姉妹や大人達であったが、その被害が自分たちにも及ぶようになると、最早そうは言っていられない。こうして対策に乗り出すこととなったのであった。

「困ったものですねぇ、ソアラ君にも」
普段から温厚で、ソアラの味方をすることの多いトルネコも今は苦りきった表情を浮かべている。このところソアラが買い物のお釣りを誤魔化して、一人で勝手に買い食いをしていることがわかっていた。おまけにとっておきのおやつまで、最近は食べられているトルネコなのであった。
「そうだな。今後のことも考えれば、やはりここらで灸を据えておくべきだろう」
直接的な被害は受けていないが、ライアンもソアラの行動には頭を痛めていた。いたずらを仕掛ける事に夢中で、どうも稽古がおざなりになっているように見えたからだ。

「マホトーンさえ封じられなければ、何とかなると思うのですが・・・」
「まさかソアラが、あんなに頭が回るとは思わなかったわよね」
このところ、いいように散々からかわれっぱなしの、クリフトとアリーナも困惑の表情を浮かべている。ザキを無効化されたクリフトは、次にマホステを封じようとマホトーンを唱えるも、いつの間にかソアラが持ちだした『静寂の玉』により、逆に自身の魔力を封じられてしまうという事態に陥っていた。取り返そうにも、こういうときの逃げ足も超一級品なソアラに、アリーナでさえ何度も煮え湯を飲まされていた。
「まったく、しょうもない奴じゃ!」
魔法学の講義を、連続して見事にすっぽかされたブライも憮然としている。おまけにソアラに向けて撃った『マヒャド』もクリフトの呪文同様マホステに阻まれてしまい、そのプライドに傷をつけられていた。

「同感だわ。アタシのとっておきの口紅、駄目にしてくれたお礼は高くつくわよぉ!!」
と、マーニャが指を鳴らす。形のよい柳眉が、切れ長の黒曜石の目が、きりきりと上に釣り上がっていた。エンドールで購入した、まだ使ってもいなかった限定色の口紅を、根本からへし折られたマーニャの怒りは熱い。
「本当にね。どうしてくれようかしら?」
口元に淡い微笑みを浮かべたミネアが、静かに口を開いた。姉とは対照的に静かなミネアであるが、その目はまったく笑っていない。その目には、猛獣さえも射殺すような光が宿っている。商売道具でもある、大事な水晶球とタロットに落書きされたミネアは、かなり本気で怒っていた。パーティ内で、怒らせてはいけない、敵に回してはいけない人、ということではまっ先に名前が上がるのが彼女である。

「皆ソアラには言いたいこともあるだろうけれど、私にまかせてくれないかしら?」
そう言ってまたも口元だけで微笑むミネア。そうして彼女がその懐から取り出したものは、ソアラが持っていたはずの静寂の玉であった。皆はこれを見て、ただ黙って頷くしかなかった。まだ、死にたくはなかった。


その晩ミネアが一人おこなったソアラへのお仕置きは、それはもう見ている皆が同情するもの、であった事だけ伝えておくことにする。その後、(ミネアの厳命を受けた)クリフトらは呪文錬成の速度を飛躍的に上げ、マホステよりも早く呪文を完成させる事に成功したために、ソアラの逆襲はここに潰える。だがめげないソアラは、虎視眈々と再度の逆転のきっかけを探しながら、今日も呪文に怯える日々を過ごしているのであった。

「いいか、これで終ったと思うなよっ!!」
めでたし、めでたし?

おしまい
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