The light stuff  あかるいひとたち

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冒険中の話

パデキアに関する一つの仮説

クリフトが風邪をひいた。元々の身体が頑健ではないから、大丈夫かと心配する一同の予想どおり、彼はあっという間に高熱を出し、もう4日間もこの状態が続いている。喉も痛めて食事も満足に摂れないために、今もベッドでぐったりと横になっていた。

「ちょっと待て。なーんか前にもこんなことなかったかぁ?」
新しい氷嚢をクリフトにあてながら、ソアラは首を捻った。いつも宿で同室で、気心も知れているという理由で看病は彼に任されている。

と、言えば聞こえはいいが、彼の風邪引きの原因をつくったソアラに皆が責任を取らせただけの話である。そして断っておくが、過去のものと同じような文章が続いていたとしたもそれは、決して手抜きではない。(本当か?)

「知りませんよ。そんなこと・・・」
「おい、無理にしゃべんな。喉イテーんだろ?」
そう言いながらもソアラは、『やっぱり喋ってくれないと、寂しい』などと平気で言い出す厄介なおこちゃまである。そんな彼に看病されるクリフトの容態は、はっきりいえば、かなりよろしくない。咳はさほどでもないのだが、とにかく熱が高すぎた。目が病人特有の潤みを見せており、その苦しそうな息使いと熱からくる体の痛み、倦怠感に耐えているような様子にはソアラも眉を顰める。
「マジでごめん。俺が風邪引きゃよかったんだよなぁ」

遡ること6日前、次の目的地へと馬車で移動していた一行は、小休止ついでに見つけた湖で釣りを行っていた。そこであわよくば夕食の一品を、と張り切ったソアラであったが、ひょんなことから彼はブライを怒らせて、湖ごと凍結されるという事件を起こした。そこでクリフトは、ソアラに巻き込まれる形で一緒に凍らされ、風邪を引く羽目になったというわけだ。

「気にしないでいいですよ、何とかは風邪はひきませんといますし。証明されてむしろよかったんじゃないですか」
「お前って、何で俺には優しくねえんだよっ?!」
思わず唸るソアラだったが、それは事実。彼は、氷漬けになっても風邪も引かずケロッとしている、まさにバケモノのような体力の持ち主であった。
「人に風邪をひかせておいて、それを言うんですか?」
「はい、スンマセンでした・・・・・」
鋭い一言に撃沈する。元より口で勝てる相手ではないのだが、今回はどうも本人に非があるのを自覚しているせいか素直であった。謝ると同時に、がっくり頭を垂れるソアラ。これに思わず笑おうとしたクリフトだったが、咳き込んでしまった。

いつもと違う、かなり面白くも、珍しい展開なのだが、これを是としない人物が一人だけいる。

「ちょっと!!何しているの?!」
「うぉ、出たっ」
「あ、姫様」
それはもう棘のある口調で、いきなり部屋に乗り込んできたのは勿論その人物。クリフトの幼馴染で、主君でもあるアリーナ姫だった。アリーナはきっ、と親の仇に出会った如くソアラをそのまま睨みつけた。
「大丈夫?そんなに咳き込むなんて、一体何をされたのよ?!」
「待たんか!!俺は無実だ。何もしてねーやぃ」
「どうかしら!信用出来ないわ」
と、アリーナはソアラをクリフトの枕元から力づくでひっぺはがし、位置を入れ替わる。大体からして、ソアラがクリフトの看病をするのかということに、彼女は納得がいっていない。自分だってこうして看病をしたかったというのに、クリフト本人から風邪を感染したら大変ですから、とやんわり断わられ、マーニャやミネアにも感染ってしまったら逆に心配かけるし、それを自分のせいだとクリフトは責めるはずだ、と言われたから、しぶしぶ引き下がったに過ぎないのだ。好きな人の看病をしたいと思うのは、ごく自然な乙女心である。

クリフトがアリーナに臣下以上の気持ちを持ってることを、アリーナ本人を除いて誰もが知っているように、アリーナも昔からクリフトが大好きで、その思いがこの旅の間に確実に開花したことを、クリフト以外は簡単に察知できていた。両思いなのに、いつまでたっても片思いな状態で、すったもんだを繰り返すこの主従をどうにかしようと特にソアラは頑張るのだが、トラブルメーカーでもある彼はいつも事を上手く運ぶことが出来ず大変な目にあう。

しかも双方、揃いも揃って大変なヤキモチ焼き。特にアリーナのジェラシーストームは、時も場所も選ばない理不尽さで、クリフトの親友というだけで、いつもいつもその被害を受けるソアラにとっては、今や己の死活問題にまで発展している。今回も風邪を引かせた、ということで、彼はアリーナから既に怒りの鉄拳をお見舞いされていたりする。

「じゃ、ソアラは食事でも採ってきたら?その間はわたしがちゃんと看病するから」
そう言って、ソアラを追い払おうとするアリーナだったが、ではきちんとクリフトの看病が出来るかというと、そこには非常に疑問が残る。なにせ包帯すら禄に巻けない彼女は、クリフトが戦闘中に負った怪我をより悪化させまくるという前科が片手に余るほど。それに彼女は世継ぎの姫君であるため、世話をするよりされる方に、慣れてきっている。

「いや、まだ腹減ってねーし大丈夫だ」
それがわかっているだけに、ここはソアラもハイ、そうですかと引き下がらなかった。普段の状態ならまだしも、いまのクリフトにアリーナのお守りはさせられない。そう考えて部屋に居座るソアラに、アリーナの柳眉はきりきりと逆立つ。

「いいから今から10数えるうちに部屋から出ていきなさい!でないとどうなるか、わかっているんでしょうね?」
そう言って両手を鳴らすアリーナに、ソアラは焦りつつも注意を促す。
「ちょ!お前な、もそっとTKO考えろよ。ここって病室だぞ?」
「それを言うならテクニカル・ノックアウトです。この場合ならTPOっていうんです!」
たとえ病気でも、数の少ないツッコミ役(何故なら周りはボケばかり)として責務を果たすクリフト。彼はどうにも苦労をしょいこむ性質だった。

「あー、それだそれ」
「はぅぅ・・。ごめんなさい」
言い間違いとはいえ、ソアラの方が正しいことに変わりはない。アリーナはこのあまりに常識的な指摘に、軽いショックを受けると同時に、いくら恋敵?が邪魔とはいえ、自己中心的にただ騒ぐような行為をしたことを反省する。
「いいんですよ、姫様。ですがまた、心配をお掛けしてしまいましたね。本当に申し訳ありません」
「やだ、謝らないで。クリフトは一つも悪くないわ!!全部ソアラのせいだもの」
物凄い勢いで首を振るアリーナに、カチンとくるソアラ。

「待たんかい!そもそも湖を凍らせたのはじーちゃんだかんな。俺だって実は被害者なんだぞ!!」
「ソアラが爺をからかったせいでしょ?!」
「そりゃそーだけど、お前さ、俺の扱いが酷すぎね?リーダーだぞ、俺」
「リーダーならリーダーらしくしなさいよね!何よ!いっつもいっつも私の邪魔ばかりしてくるくせに!!」
「ちょ、待たんか!話がズレてんぞ。俺はそう言うことはいってねぇだろが」

舌の根も乾かぬうちにまたも口論を開始するソアラとアリーナの二人。激しい頭痛を覚えつつも、クリフトはまたこれを仲裁するべく、話題を変えることを試みた。

「姫様。そういえばマーニャさんやミネアさんは何処へ行かれているのですか?」
「あ、あのね二人共出かけているの」
と、少し慌てながら答えるアリーナ。いつもであれば、姉妹はこの時間までに一度はクリフト達の様子を見に来ているはずであった。

「あれ?お前に言ってなかったけか?じーちゃん達と一緒にアネイル行ってんだよ。ついでにミントスにも寄るってさ。じーちゃん、あんときゃ気合入れて魔法唱えてたかんなー。そら腰痛もでるわな」
うんうん、と一人頷くのはソアラ。
「ミントスって・・・。まさかパデキアを?」
これに思わずがば、と身をおこすクリフトをアリーナはその膂力をもって押しとどめる。

「落ち着いて?これはねクリフトの為っていうんじゃなく、これからを考えて念には念をって用心の為よ。爺の腰痛がちょっと思わしくなかったから、アネイルの温泉に行くっていう話が出たついでに、パデキアを少し分けてもらっておこうっかって話になっただけ」
「ですが姫様、そのきっかけをまたも私が作ってしまったのでしょう?それではあまりにも申し訳が・・・・」

(もぉぉ!絶対そう言い出すと思った。だから黙っておきたかったのにソアラってば!!)
何事においても生真面目に考えすぎるのが、彼の短所だと思うアリーナは、困ったように眉根を寄せる。どうか気に病まないようにと言おうとした瞬間に、またもソアラが混ぜっ返すようなことを言い出した。

「いーじゃねーか。あれ飲みゃすぐ治んだし。ま、俺だったらあーんな不味いモン二度は絶対ゴメンだけどな、お前にゃ丁度いいんじゃね?」
「あら、良薬が口に苦いっていうのは有名な話じゃない。まぁ、確かにすごい味だったとはおもうけど」
「え!そ、それってまさか?!」
真っ青な顔のクリフトが、悲鳴に近いような声をあげた。彼は聖印を切り、祈りの形に腕を組み合わせ身体を震わせた。

「ど、どしたんだよ?!おい」
「クリフト?!」
この様子に何事かと首を傾げる二人。

「・・・・・少々お伺い致しますが、ソアラは何故パデキアの味をご存知なのですか?」
「あー、それはあん時にだなー」
と、答えようとした瞬間にアリーナの叫び声と拳がソアラに向かって飛んできた。
「ソアラっ!!!!!!」
アリーナの顔はクリフトと対照的に真っ赤になっていた。そしてその身に纏う空気が臨戦態勢へと一気に変化した。それ以上言ったら、息の根を止めると紅玉の目は語っている。

「うわ!!なにすんじゃ!」
「黙りなさい!さっきから余計なことばかり言って!!もぉ勘弁しないんだから!!」
「だからぁ、何でいっつもこうなるんだよぉぉ!!」
野生の勘で攻撃をかわしつつ、部屋をドタバタと逃げまくるソアラとそれを追いかけるアリーナ。

(はぅぅ。思い出しちゃったじゃないのぉ!!ああ、もうあんなこと、クリフトには絶対絶対知られたくない!!)
『あの時』の話は、彼女にとってトラウマに近い苦さと羞恥を思い出すものであった。それと向き合うには、まだまだ時間の経過が必要で、いまここでソアラにその話に触れられることすら許し難かった。為にアリーナは、先ほどの反省も綺麗に忘れ、ひたすらソアラを追い回し続けた。

(まさか、とは思いましたが・・・・・。姫様のあの態度からして、やはりソアラが私に薬を・・・・。し、しかし人命救助なのですからきっと私も同じ事をしただろうし、気にする必要はないはずだ。うん。これは早く忘れよう・・・・・)
と、こちらはこちらで妙な勘違いを引き起こしたクリフトも、二人のことそっちのけで一心不乱に邪念を振り払うべく祈りを捧げ続けていた。

こうしてパデキアを携えて、帰ってきた姉妹達が見たものは、疲労困憊しているソアラと妙にギクシャクした様子のアリーナ、思いつめた様子でひたすら考えこんでいるクリフトであったという。

ちなみにソアラが何故パデキアの味を知っているかというと、異様に食い意地のはった彼がクリフトにと用意した薬湯を、あの時興味本位で舐めて悶絶したためである。クリフトに薬を飲ませたのは誰だったか、これをあえて語る必要はないだろう。では果たしてこの誤った仮説はいつに解けるのか。それはまた別のお話である。

おしまい


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