The light stuff  あかるいひとたち

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「冒険後の話」
冒険後 ちょっと長めの話

姫と殿下のBad Communication ~その2~

「ですから、謝っているじゃないですか」
「知らない、知らないっ!!」
端正な顔や体のそこかしこに痣をつくったクリフトが、朝食のテーブルで向かいに座るアリーナを宥めている。未だ怒りが醒めやらぬ、といったアリーナは、横に顔をそむけ頬を膨らましたままだ。彼らの背後では、お世話係の女官や侍従達がこちらもおろおろと成り行きを見守り、右往左往を繰り返していた。

クリフトの目の下には、くっきりと隈がある。いつもなら森の湖水のように澄んだ蒼の目も充血していた。壮絶なジェラシーストームの後は一睡もせず、寝ぼけたことへの釈明を生真面目にしていたに違いない。彼の顔にはありありと疲労が見て取れた。そして、疲労が冷静な判断能力や心の余裕というものを奪いさるのは当然であって。

「もういい加減にしてください。いつまでくだらない焼きもちを焼けば気が済むんですか」
さしものクリフトも苛つき、ついに我慢の限界となったようだった。思い切り顔を顰め、髪を掻きあげて長い溜息を吐く。
「くだらないですって!ああそう、やっぱりあなた私のことなんかどうでもいいのね!!何よっ!!」
ばん!とテーブルを真っ二つにする勢いで両手をつき、立ち上がるアリーナに、こちらもどん!とテーブルを叩き、負けじと応戦するクリフト。

「そっちこそ!!私を信用してくれていない!私があなた以外の女性に興味がいくはずないでしょう!!」
「あらそうかしらっ?!大体あなたね、結婚したっていうのに何で相変わらず女の人にモテモテなのよっ!!隙がありすぎるんじゃないの?だからわたしばっかり、こんな心配する羽目になるのよ!!」
「それこそ冗談じゃないっ!!貴女こそ誰彼かまわずに笑いかけたり!!無防備すぎるんですよ、私がどんなにそれに胸を痛めているかなんて、ちっともわかってないじゃないですか!!!」
「誰彼かまわずに笑いかけたりなんかしないわよ!!クリフトじゃあるまいし!!」
「そんなことはしてません!!」
「してます!!」
と、口論はエスカレートの一途をたどる。

「もぉぉ、何よ何よ!!ベッドではあんなに愛してるって優しく言ってくれるのにっ!!」
「そっくりその台詞は返しますよ!毎晩のように隣に来ては、しおらしく寂しいと甘えて来るのは何処の誰なんですか!!」
「姫様も殿下も!!いい加減になさってくださいーーーーーーーーーー!!!!!!」
あわや赤裸々な夫婦の生活が暴かれそうになったその時、年かさの女官長や侍従長が飛んできて、この場は強制終了となった。後ろでは何故か女官達が、至極残念そうな顔をしていた。

だかしかし、喧嘩するほど仲がいいとはいえ、こういう喧嘩はこじれてしまうと中々にその修復も難しい。
「素直に謝ったら、許してあげなくもないわよ?」
「そちらこそどうなんです」
「誰が謝るもんですか、ベーだ!」
「ああ、そうですかわかりました!」

今度はぷい、と背を向けて、お互いそっぽを向いたまま時間ばかりが過ぎていく。こうなるとありがたかったはずの休暇は仇となる。仕事にかこつけてこの場からは逃げられそうにない。かといって先ほどの言い争いに、大いなる危険を感じた女官長達に言い含められた衛兵が目を光らせているので、何処にも行けず二人は気まずい空気のまま、一緒の部屋に押し込められるはめに陥っていた。

こんな時、この二人をまとめて諌められるはずの国王と、その教育係の老人はエンドールに招かれていて生憎の留守であった。勿論、城に勤める全員がこれに『肝心なときに居ないってどういうこと!』とツッコんでいたことは言うまでもない。

今や二人の喧嘩は城内全体に伝わり、女官や侍従、大臣や文官、その他下働きの皆に至るまでが、はらはらしながら夫婦の動向を伺っている状態となった。そしてとうとう、というか、やはりというか、蜂の巣をつつくような騒動は持ち上がる。

「いいわ、こうなったら決着つけようじゃないの!!」
「ええ。お望みの通りにしてさしあげましょう」
「決まりね!覚悟なさい」

一緒の部屋にいれておけば、いつものようにすぐ仲直りするだろうと楽観視をしていたのだが、逆効果だったらしい。どうやらまた、口論がこじれにこじれたようである。聞こえた怒声と物騒な物音に、またも部屋に急行した女官長は、必死に制止する衛兵数人をなぎ倒し始めたアリーナを見て、悲鳴に近い叫びをあげる。
「姫様っ!!どうかそれ以上は!!ああ、早く、早く姫様をお止めしてっ、修繕費用をこれ以上増やしてはなりません!」
いや、そういう問題じゃないだろう。

「離してっ!こうなったらもう後には引けないのよ。クリフト!得物の用意をしなさい。修練場で待っているわ!」
「いいでしょう!本気でやりますからね」
「本気なのですか、姫様っ?!大体からして、殿下が姫様に敵うわけがないじゃありませんか」
「その通りですぞ。殿下っ、一体どうなさったというのです。このようなこと、いつものあなた様らしくもない!!」
「私とて男です!矜持くらい持ちあわせております!」
そう言うなり、追いすがる女官や文官達を振り切って、さっさとクリフトは部屋を出ていってしまった。慌てて数人が後を追うも、素早いクリフトは、彼らをなんなく撒いてしまう。

そしてこちらも、止めてくださいと必死に懇願する周囲を引きずりなからアリーナは、城勤めの兵士達が訓練等を行う、修練場まで来てしまった。修練場で使う武器は、刃を潰してあるために殺傷能力は殆どない。だが二人は世界と国を救った英雄なのである。その気になればそんなナマクラさえも、一流の武器として扱えるということを知る衛兵や近衛達は、束になりそれはもう必死に、身を呈してアリーナを止めようとした。だが、あえなく返り討ちにされるか、その気迫に呑まれ動けなくなるかの二択だった。アリーナの通ってきた道には、今その犠牲となった面々が横たわっている。

とうとうクリフトがやって来た。その手には兵士が槍の訓練用として使っている、長い木の棒と皮の帽子が握られている。それを静かに前に置くと、無言で火花を散らすクリフトとアリーナ。

いよいよ二人の戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。もうこうなっては、誰も二人を止められる者などいない。どう転んでも血をみるのが明らかといったことに半ばヤケになったのか、トトカルチョを開始する連中が出る始末である。

「もう一度だけ聞いてあげる。本気なのね?」
「ええ。お覚悟ください」
「そう、わかったわ。ならば全力でいくわよっ!!」
アリーナが、後ろに手を引くような構えをとる。クリフトは、ただ静かにその様子を見ている。

そこに居る全員が息を飲み、あるいは思わず目を閉じて神に祈った次の瞬間。

「「3本勝負っ!!叩いて、被ってジャンケンポン!!」」
言いながらアリーナとクリフトはジャンケンを始め、二人を除く、そこに集まった全員が見事に膝から崩れ落ちた。そのガタガタという物音は、程近いサランの町まで響いたという・・・・。(いいのかこんなオチで)

叩いて被って、の決着は結局つかなかった。(互いの防御が完璧で決定打が与えられなかった為)だが、ひとしきり体を動かしてスッキリしたのか、アリーナはそれはもう可愛らしくクリフトに謝り、彼もまた甘い笑顔でそれを了承したため、勝負はもう何の意味をもなさなかった。不幸にもこの騒動に巻き込まれてしまったサントハイム城の人々は、その馬と鹿っぷりをもう一度、まざまざと見せつけられて暫くの間、青息吐息で過ごしたという。

おしまい
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