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「冒険後の話」
冒険後 ちょっと長めの話

姫と殿下のBad Communication ~その1~

☆この作品は、ALTERNATIVEのサイトマスター しを様に捧げさせて頂きます。

世界が闇の脅威から解放され、はやくも数年が経過した。人々は平和を噛み締めつつ毎日を過ごすうちに、嘗て世界を救った英雄たちへの関心を徐々に薄めていった。その功績は最早過去のものとのなり、今の導かれし者たちはそれぞれの個々の生活を、日々生きているのである。サントハイム王国には、嘗て勇者と共に旅をした英雄が3人いた。一人は世継ぎの姫君ながら、武術の達人であるアリーナ、その教育係で希代の魔導師と名高いブライ、そして姫の幼馴染の若き神官クリフトである。今現在、この姫と神官は必ずと言っていいほど二人一組として語られ、扱われる。その理由は、二人が夫婦だからだ。

星の数ほどあった縁談を、本当に根こそぎ蹴飛ばし続けたおてんば姫が、自ら結婚相手にと望んだのは幼馴染だった。すったもんだの末に結ばれた二人の婚姻には、さぞかし物議を醸すかと思いきや、ごくあっさり婚約は認められ国の復興の目処のついた頃に、祝福に包まれた華燭の典を挙げた。この二人の今の通名は、サントハイム名物『うましか夫婦』もしくは『万年新婚夫婦』である。まだ子宝には恵まれていないが、その仲睦まじい様子には思わず人が目をそむける、といえばその度合はおわかり頂けるかと思う。そのとばっちりを受ける形で、ブライは未だ隠居できないのであるがその話は、とりあえず置いておこう。

その日、アリーナがすべての公務や雑用を終えたのは夜もかなり更けてからであった。予定外の訪問客や、届けられた嘆願書などに目を通しているうちにあっという間に時間は過ぎてしまった。父を補佐する形で政務に携わるようになってからは、本当に時間がいくつあっても足りない。アリーナは、仕方ないとは思いつつも、あの旅の頃の方が一緒にいれたとひとりごちた。夫であるクリフトもまた、大神官ルカの右腕として職務に励んでおり、名実ともに次期大神官候補筆頭となった最近は、アリーナ同様仕事に忙殺される日々である。

酷い時には、朝お互いの顔も禄にみられないうちに部屋を出て、夜に帰ってみれば既に相手は夢の中といったすれ違いが、何日も続くこともあるこの夫婦。だが、明日は待ちに待った休暇日。アリーナに比べあまり体が頑健ではないクリフトは、生真面目な性格故に無理を重ねる傾向も強いために休暇を(ほぼ強制で)定期的に取らされている。そこで、よほどの事がない限りは、アリーナも一緒に休暇を取って過ごす事がこの夫婦の慣習となっていた。

アリーナはうきうきしながら夫婦の部屋へと足を向ける。明日と明後日は夫婦水入らずで、何の邪魔も無く一緒に居られる。このところ禄に一緒の食事すら取れない日が続いていたせいもあり、アリーナの喜びはかなり大きかった。

(うふふ!明日は何をしようかしら!食事するときには、私がお茶淹れてあげようかな。それから中庭でお散歩とか、久しぶりに一緒に武術のお稽古とかもいいかも。そうだわ!!お昼寝とかもしようかしら?膝枕って一回やってみたかったのよね。テラスで美味しいお茶も飲みたいわね、それから・・・・・)
いまや人妻となった姫であるが、このあたり昔とまったく変わりがない。あの極度のヤキモチも未だ顕在である。夫もまた『そういうところがお可愛らしい』と言うのだからこれはもう、お手上げである。

(やだ、珍しい!)
アリーナが部屋に入ると、クリフトはソファーに体を預けたまま眠っていた。神学書が開かれたまま、その体から落ちそうになっている。このようなうたた寝をするなど、普段のクリフトであれば考えられなかった。やはり目の回るような忙しさだったに違いない、とアリーナはそっと、いたわりを込めて寝顔を覗き込んだ。
(クリフトの寝顔なんて、すいぶん久しぶりに見たけど・・・・)
少し伸びたさらさらとした絹のような蒼髪が、はらりと額にかかっていた。同じ色の知的な光をたたえた瞳は、今は見えないが、閉じられた瞼に乗っている睫は影が出来るくらいに長い。加えて、すっと通った高い鼻梁に、綺麗な流線を描く眉や唇。おまけに肌理の細かい肌は、およそ日に焼けるような生活をしていないために、なまじの女性よりも美しいときている。

(だんな様が綺麗すぎるって、なんか複雑、かも)
胸がドキドキ騒ぐことに、なんとなく悔しくなるアリーナだが、昔とは違いこんな無防備な姿が、偶にではあるが見られることは、自分だけに許された特権のようで嬉しい。不意に愛しさが込みあげたアリーナは、その桜桃色の唇をそっと寝ている彼の頬に落とした。
「ん・・・・・・・」
元々気配に敏感なクリフトは、頬にかかるオレンジブラウンの巻き毛とかすかな吐息、柔らかく落とされた感触に身じろき、うっすらと目を覚ました。
「ごめんなさい。起こしちゃったかしら」
「くすぐったいですよ・・・・・ミーちゃん」
くすくすと笑いながら答えるクリフトに、ぶち!っとアリーナがキレた。誤解のないように記しておくがミーちゃんは、猫である。アリーナが小さな頃にいつの間にか城に居ついてしまった、可愛い白の雌猫で誰の猫というわけでもないが、城の皆で可愛がっている。

その直後、部屋から聞こえた怒号と破壊音と悲鳴に、すわ何事と急ぎ駆けつけた衛兵達は、その恐ろしさにしばらくの間誰も近づけなかったという。

そして、一夜が明けた。

続きます

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